半知録

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『日知録』易篇訳「東鄰」

東鄰

〔要約〕

既済の九五爻辞に「東鄰殺牛、不如西鄰之禴祭、實受其福」とある。「鄰」とは、道を失い、命をほしいままにする者のことである。「東鄰」とは、殷の紂王を指す。

 

〔原文〕

馭得其道、則天下皆爲之臣。馭失其道、則彊而擅命者、謂之鄰。臣哉鄰哉、鄰哉臣哉。『漢書』郊祀志引此、師古注「東鄰、謂商紂也。西鄰、謂周文王也」。

 

〔日本語訳〕

統治するときに道を得ていれば、天下はみな臣下となる。統治するときに道を失っていれば、強制して命をほしいままにする者となり、これを鄰と言う。臣であるのか鄰であるのか、鄰であるのか臣であるのか。『漢書』郊祀志はこれ(既済の九五爻辞)を引き、顔師古は「東鄰は、殷の紂王のことを指す。西鄰は、周の文王のことを言ったものだ」と注している。

 

〔解説〕

 「臣哉鄰哉、鄰哉臣哉」は、『尚書』益稷の文である。その孔伝では「鄰、近也。言君臣道近、相須而成」とあり、「鄰」を近いと解している。