半知録

-中国思想に関することがらを発信するブログ-

『日知録』易篇訳「序卦雜卦」

序卦雜卦

 

【原文】

序卦・雜卦皆旁通之説、先儒疑以爲非夫子之言。然否之「大往小來」承泰之「小往大來」也。解之「利西南」承蹇之「利西南、不利東北」也。是文王已有相受之義也。益之六二即損之六五也、其辭皆曰「十朋之龜」。姤之九四即夬之九三也、其辭皆曰「臀旡膚」。未濟之九四即既濟之九三也、其辭皆曰「伐鬼方」。是周公已有反對之義也。必謂六十四卦皆然、則非『易』書之本意。或者夫子嘗言之而門人廣之、如『春秋』哀十四年「西狩獲麟」以後續經之作耳。

 

【日本語訳】

序卦や雑卦はみな〔上下反転の卦を組み合わせる〕旁通の説を示しているが、先儒は夫子の言ではないと疑った。しかし、否の卦辞「大往小来」は泰の卦辞「小往大来」を承けているし、解の卦辞「西南に利あり」は蹇の卦辞「西南に利あり、東北に利らざる」を承けている。これは、文王がすでに〔上下反転の卦が〕互いに承けるという義を保持していたからである。益の六二は〔上下反転させると〕すなわち損の六五であり、その爻辞にはともに「十朋の亀」とある。姤の九四は〔上下反転させると〕すなわち夬の九三であり、その爻辞にはともに「臀に膚无し」とある。未済の九四は〔上下反転させると〕すなわち既済の九三であり、その爻辞にはともに「鬼方を伐つ」とある。これは、周公がすでに卦の上下を反転させるという義を保持していたからである。必ず六十四卦がすべてそうであるかと言えば、『易』という書物の本意ではない。もしかすると、夫子がかつてこのことについて言及し、その門人たちがそれを敷衍したものかもしれない。それは、『春秋』哀十四年「孔子が西に狩りして麟を獲た」後、〔門人たちが〕経の制作を続けたようなものである。

 

【解説】

旁通之説ー旁通説は、虞翻の特徴的な易説で、一卦六爻の陰陽すべてを逆転させて別の卦を生み出し解釈する方法論のことである。例えば、比䷇の旁通が大有䷍となるようにである。しかし、顧炎武が言う「旁通」とはこれと異なる。ここで言う「旁通」は、一卦六爻の上下反転させた卦のことを言っていると考えられる。

必謂六十四卦皆然則非易書之本意―序卦伝・雑卦伝では、すべてが上下反転した卦の組み合わせで並んでいるわけではない。乾と坤、頤と大過、坎と離、中孚と小過のように陰陽を反転させた組み合わせで並んでいることもある。顧炎武が言う「旁通」が、『易』全体の本意ではないと言っているものと考えられる。