半知録

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『日知録』易篇訳「改命吉」

改命吉

〔要旨〕

革の九四は、諸侯が天子の位に進もうとする、湯武革命を表した爻である。ただ湯王や武王は武力を使ってまで討伐したことに悔いがったが、天下は湯王や武王を指示した。そのことから、その爻辞に「悔い亡び、命を改むるは吉」とあるのである。

 

〔原文〕 

革之九四猶乾之九四、諸侯而進乎天子、湯武革命之爻也。故曰「改命吉」。成湯放桀於南巢、惟有慙徳、是有悔也。天下信之、其悔亡矣。四海之内、皆曰非富天下也、爲匹夫匹婦復讎也。故曰「信志」也。

 

 

〔日本語訳〕 

革の九四は乾の九四のようなもので、諸侯であって天子の位に進もうとする、湯武革命を表した爻である。それゆえ「命を改めれば吉」とするのである。湯王は桀を誅殺することまではせず、南巣に逃がしてやったのは、武力を使ってまで討伐したことへの後悔の念があったからで、悔いがあるということである。しかし天下は湯王のことを信頼し、その悔いはなくなった。天下の者はみな「天下の富を目当てとしたのではなく、庶民のために仇を討ったのだ」と言い合った。それゆえ「志を信じたからである」とされるのである。

 

〔解説〕

革の九四を諸侯であって天子の位に進もうとする爻でとするのは、六爻の貴賎では四爻は諸侯、五爻は天子の位とされるからである。また、湯武革命を表した爻とするのは、干宝の乾九四の注「武王兵を孟津に擧げ釁を観て退くるの爻なり」(『周易集解』巻一)が念頭に置かれていると思われる。