半知録

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『日知録』易篇訳「巳日」

巳日

〔要旨〕

革にみえる「己日」は、十干の「己」の意味である。「己」は、十干の中間にあり、まさに変化しようとする時にあたる。さらに「己」の次の庚は、更めるという意味がある。革の卦辞「己日乃孚」とは、天下の物事は己日の半ばを過ぎてまさに変化しようとする時にあって変革するべきで、そうして人は信頼するということである。

 

〔原文〕 

革「己日乃孚」、六二「己日乃革之」、朱子發讀爲戊己之己。天地之化、過中則變、日中則昃、月盈則食。故『易』之所貴者中。十干則戊巳爲中、至於己、則過中而將變之時矣。故受之以庚。庚者、更也。天下之事當過中而將變之時、然後革而人信之矣。古人有以「己」爲變改之義者、『儀禮』少牢饋食禮「日用丁己」、注「内事用柔、日必丁己者、取其令名、自丁寧、自變改、皆爲敬謹」。而『漢書』律歷志亦謂「理紀於已、斂更於庚」是也。【納甲之法、革下卦離、納已。】王弼謂「即日不孚、已日乃孚」、以「已」爲「已事遄往」之「已」、恐未然。

 

〔日本語訳〕 

 

革の卦辞に「己日になってはじめて信服する」とあり、六二爻辞に「己日になってはじめて改革する」とあるが、朱子発は十干の戊己の己で読む。天地の変化は、半ばを過ぎれば変化し、日中になれば傾き始め、月が満ちれば欠け始める。それゆえ『易』が貴ぶところは中なのである。十干は戊己を中とし、己に至れば、半ばを過ぎてまさに変化しようとする時となる。それゆえ己の次を受けるのが庚なのである。庚は、更を意味する。天下の物事は半ばを過ぎてまさに変化しようとする時にあって変革するべきで、そうして人は信服する。古人に「己」を変革の義とする者がいる。『儀礼』少牢饋食礼に「日は丁己を用いる」とあり、その鄭玄注に「祭廟の祭祀には柔日(乙・丁・己・辛・癸)を用い、その日が必ず丁・己であるのは、その善い名を取ったのであり、〔丁は〕みずから丁寧となる、〔己は〕みずから変革することを意味する、すべて謹敬の表れとなる」と。また『漢書』律暦志でも「己におさめ記し、庚に引き締め改める」というのが、それである【納甲の法では、革の下卦は離で、それは己に配当される。】。王弼は「その日にあれば信服せず、その日を終えてはじめて信服する」と言い、「已」を「事を已(や)めて速やかに往く」の「已める」と解釈するのは、おそらく正しくないであろう。