半知録

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2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『日知録』易篇訳「不耕穫不菑畬」

不耕穫不菑畬 〔要旨〕 无妄の六二爻辞に「不耕獲、不菑畬」とあるのは、耕作かつ開墾は、前人がすでに行ったことからである。その象伝に「不耕獲、未富也」とあるのは、前人が行ったことに依って自分が成し遂げたことは多くないからである。 〔原文〕 楊氏…

『日知録』易篇訳「不遠復」

不遠復 〔要旨〕 復の初九は、動くことの萌芽である。それ以前は、喜怒哀楽といった感情はいまだ現れていない。それゆえ「復において天地の心が見られる」とあるのである。顏回は中庸であろうとし、それを復卦に選び求めた。そうして八つ当たりをせず、過ち…

『日知録』易篇訳「童觀」

童觀 〔要旨〕 童児は、師の教えを受けなければ、何事も完全には習得できない。それでも、観の初六に「童観、小人咎无し」とあるのは、大人には大人の道、小人には小人の道があるからである。「君子吝」ともあるのは、君子が小人の道を行うのは恥ずべきこと…

『日知録』易篇訳「成有渝无咎」

成有渝无咎 〔要旨〕 豫上六の爻辞に「成れども渝ふる有れば、咎无し」とあるのは、人は過ちを犯しても初めから改めることができず、その過ちを反省しないことを知らしめるためである。 〔原文〕 昔穆王欲肆其心、周行天下、將皆必有車轍馬迹焉、祭公謀父作…

『日知録』易篇訳「自邑告命」

自邑告命 〔要旨〕 邑とは、人主が居る場所である。『易』で言う「邑」は、すべて内政のことに関係している。 〔原文〕 人主所居謂之邑。『詩』曰「商邑翼翼、四方之極」、『書』曰「惟尹躬先見於西邑夏」、曰「惟臣附於大邑周」、曰「作新大邑於東國洛」、…

『日知録』易篇訳「武人爲於大君」

武人爲於大君 〔要旨〕 「武人為於大君」は、「武人は大君と為る」ではなく、「武人は大君と為れ」と読むべきだとする。履六三の武人は、才能はなくとも志は高く、行動に移そうとするが、成就しないので、履六三には「虎の尾を履み、人を咥ひ、凶」とある。…

『日知録』易篇訳「既雨既處」

既雨既處 〔要旨〕 『易』での陽が唱導して陰が従うという陰陽の義は、夫婦関係では成り立たない。小畜の爻辞がそれを表している。その爻辞では、とりわけ婦が夫を制し和ならざる状態の場合は言及するが、夫婦が正しく和している状態の場合は言及していない…

『日知録』易篇訳「師出以律」

師出以律 〔要旨〕 師の初九爻辞「師出以律」の「律」とは、殷の湯王や周の武王のような仁義を心構えとし、斉の桓公や晋の文公のような節制を用途とする意味である。『易』の卦辞で言う「貞(正しさ)」に相当する。 〔原文〕 以湯・武之仁義為心、以桓・文…

『日知録』易篇訳「九二君徳」

九二君徳 〔要旨〕 乾の九二が、臣下の位にも関わらず、君徳があるとされるのは、人臣は、まず人君となる徳を保持して、そうして理想的な君主となりえるからである。 〔原文〕 爲人臣者、必先具有人君之德、而後可以堯・舜其君、故伊尹之言曰、「惟尹躬暨湯…

『日知録』易篇訳「六爻言位」

六爻言位 〔要旨〕 易伝にみえる「位」には、二つの意義がある。一つは人の貴賎の位、もう一つは六爻の位置を表す位である。「位」を一つの意義で解釈しようとしても、牽強付会に陥るだけである。言葉は一つの事柄だけを表すというわけではなく、それぞれに…