半知録

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『日知録』易篇訳「有孚于小人」

有孚于小人

〔要旨〕

君子は、小人のすべてを見通せ、惑わされることなく従わせることができる。それゆえ小人を心服させるのである。解の六五爻辞「小人に孚有り」とは、そのことを言ったものである。

 

〔原文〕 

君子之於小人也、有知人則哲之明、有去邪勿疑之斷、堅如金石、信如四時。使憸壬之類皆知上志之不可移、豈有不革面而從君者乎。所謂「有孚于小人」者如此。

 

 〔日本語訳〕

君子が小人に接するとき、その人となりを知ればすべてを見通せる明哲さがあり、邪悪な者を去り疑うことはない判断力を持ち、その意志が固いことは金石のように頑強であり、人を信ずることは四時のように自然である。もし媚びへつらう小人の類がみな君主の志は決して変えることができないことを知れば、どうしておもて面だけを変えて君主に従わない者がいようか。「小人を心服させる」というのは、こういうことを言ったものだ。

 

〔解説〕

「知人則哲」は『尚書』虞書・皋陶謨、「去邪勿疑」は『尚書』虞書・大禹謨、「堅如金石、信如四時」は『大戴礼記』礼察篇に、ぞれぞれ典拠がある。