半知録

-中国思想に関することがらを発信するブログ-

『日知録』易篇訳「通乎晝夜之道而知」

通乎晝夜之道而知 〔原文〕 日往月來、月往日來、一日之昼夜也。寒往暑來、暑往寒來、一歳之昼夜也。小往大來、大往小來、一世之晝夜也。子在川上曰、「逝者如斯夫。不舍昼夜。「通乎晝夜之道而知」、則「終日乾乾、與時偕行」、而有以盡乎『易』之用矣。 〔…

『日知録』易篇訳「游魂爲變」

游魂爲變 【原文】 「精気爲物」、自無而之有也。「游魂爲變」、自有而之無也。夫子之荅宰我曰、「骨肉斃於下、陰爲野土。其氣發揚於上、爲昭明。焄蒿悽愴」。【朱子曰、「昭明、露光景也」。鄭氏曰、「焄、謂香臭也。蒿、氣蒸出貌」。許氏曰、「悽愴、使人…

『日知録』易篇訳「東鄰」

東鄰 〔要約〕 既済の九五爻辞に「東鄰殺牛、不如西鄰之禴祭、實受其福」とある。「鄰」とは、道を失い、命をほしいままにする者のことである。「東鄰」とは、殷の紂王を指す。 〔原文〕 馭得其道、則天下皆爲之臣。馭失其道、則彊而擅命者、謂之鄰。臣哉鄰…

『日知録』易篇訳「妣」

妣 【原文】 『爾雅』「父曰考、母曰妣」。愚考古人自祖母以上通謂之妣、經文多以妣對祖、而竝言之。若『詩』之云「似續妣祖」、「烝畀祖妣」、『易』之云「過其祖、遇其妣」、是也。『左傳』昭十年、「邑姜、晉之妣也」。平公之去邑姜蓋二十世矣。【『儀禮…

『日知録』易篇訳「山上有雷小過」

山上有雷小過 〔原文〕 山之高峻、雲雨時在其中閒、而不能至其巓也。故『詩』曰、「殷其靁、在南山之側」、或高或下、在山之側、而不必至其巓、所以爲小過也。然則大壯言「雷在天上」、何也。曰、「自地以上皆天也」。 〔日本語訳〕 山の高峻においては、雲…

『日知録』易篇訳「翰音登于天」

翰音登于天 〔原文〕 羽翰之音、雖登于天、而非實際。其如莊周齊物之言、騶衍怪迂之辯※、其髙過於大、學而無實者乎。以視車服傳於弟子、弦歌徧於魯中、若鶴鳴而子和者、孰誕孰信。夫人而識之矣。永嘉之亡、太淸之亂、豈非談空空・覈玄玄者有以致之哉。「翰音…

『日知録』易篇訳「巽在牀下」

巽在牀下 〔原文〕 九二之「巽在牀下」、「恭而無禮則勞」也。初六之「進退」、「愼而無禮則葸」也。 〔日本語訳〕 巽の九二の「巽いて床下に在り」というのは、〔『論語』の〕「うやうやしくても礼節がなければ疲れるだけ」ということである。初六の「進退…

『日知録』易篇訳「鳥焚其巣」

鳥焚其巣 〔要旨〕 人主の徳は、人に謙るより重要なものはない。旅の上九は、卦の一番上、離の極みであり、君主が横暴に振る舞うような位置にある。矜持を持って、諫争の論に耳を傾けなければ、その災禍は身に及ぶ。旅の上九爻辞「鳥其の巢を焚く」とは、そ…

『日知録』易篇訳「君子以永終知敝」

君子以永終知敝 〔原文〕 讀新臺・桑中・鶉奔之詩、而知衛有狄滅之禍。讀宛丘・東門・月出之詩、而察陳有徵舒之亂。書「齊侯送姜氏於讙」、而卜桓公之所以薨。書「夫人姜氏入」、書「大夫宗婦、覿用幣」、而兆子般・閔公所以弒。昏婣之義、男女之節、君子可…

『日知録』易篇訳「鴻漸于陸」

鴻漸于陸 〔要旨〕 漸の九三と上九の爻辞「鴻漸于陸」とあり、胡瑗や朱熹などは「陸」を「逵」に改めるべきだとするが、誤りである。朱熹は「逵」と「儀」と韻が合うといっているが、実は押韻していない。鴻は、漸の九三で陸に進み、上九で翻って陸に帰る。…

『日知録』易篇訳「艮其限」

艮其限 〔原文〕 學者之患、莫甚乎執一而不化。及其施之於事、有扞格而不通、則忿懥生而五情瞀亂。與衆人之滑性而焚和者相去、蓋無幾也。孔子惡果敢而窒者。非獨處事也、爲學亦然。告子不動心之學、至於不得於言、勿求於心、而孟子以爲其弊必將如蹶趨者之反…

『日知録』易篇訳「艮」

艮 〔要旨〕 艮の卦辞「其の背に艮まり、其の身を獲ず、其の庭に行き其の人を見ず」とは、臆断せず、無理押しせず、意固地にならず、我を張らないし、富貴でも志を乱すことはできなく、貧賤でも志を変えることできなく、威武でも志を屈服させることできない…

『日知録』易篇訳「改命吉」

改命吉 〔要旨〕 革の九四は、諸侯が天子の位に進もうとする、湯武革命を表した爻である。ただ湯王や武王は武力を使ってまで討伐したことに悔いがったが、天下は湯王や武王を指示した。そのことから、その爻辞に「悔い亡び、命を改むるは吉」とあるのである…

『日知録』易篇訳「巳日」

巳日 〔要旨〕 革にみえる「己日」は、十干の「己」の意味である。「己」は、十干の中間にあり、まさに変化しようとする時にあたる。さらに「己」の次の庚は、更めるという意味がある。革の卦辞「己日乃孚」とは、天下の物事は己日の半ばを過ぎてまさに変化…

『日知録』易篇訳「以杞包瓜」

以杞包瓜 〔要旨〕 姤の一陰が一番下にあるのは、瓜が生じ始めて、蔓を延ばして上に及ぼうとするようなものである。姤九五爻辞「杞を以て瓜を包む」とは、杞(おうち)を植えて、瓜の蔓が上に及ぼうとすることを防ぐことを言ったものである。 〔原文〕 劉昭…

『日知録』易篇訳「包无魚」

包无魚 〔要旨〕 「魚」は民を喩えられる。魚が逆流して上るのは、民が君主に反抗の気持ちが起こった表れである。姤九四爻辞「包无魚、起凶」とは、そのことを述べたものである。 〔原文〕 國猶水也、民猶魚也。幽王之詩曰、「魚在于沼。亦匪克樂。濳雖伏矣…

『日知録』易篇訳「姤」

姤 〔要旨〕 天下は、ひとたび治まればまた乱れる。邪説の起こることと世の浮き沈みとは、聖人でも除くことはできない。姤の「金柅に繫ぐは、柔道牽けばなり」は、そのことを述べたものである。 〔原文〕 天下之生久矣。一治一亂、盛治之極而亂萌焉。此一陰…

『日知録』易篇訳「利用為依遷國」

利用為依遷國 〔要旨〕 益六四爻辞の「用て依るところを為し國を遷すに利あり」とは、安定した国でも有事の国でも、臣下が公正な判断で君主に告げたことにもとづき国を遷すことに利益があるということ。 〔原文〕 在無事之國而遷、晉從韓子之言而遷於新田是…

『日知録』易篇訳「上九弗損益之」

上九弗損益之 〔要旨〕 君子が適切な方策を行えば、なにも失うこともなく民の生活を厚くすることができる。損上九爻辞の「損せずして之を益す」とはそのことを言ったものである。 〔原文〕 有天下而欲厚民之生、正民之德、豈必自損以益人哉。不違農時、榖不…

『日知録』易篇訳「損其疾使遄有喜」

損其疾使遄有喜 〔要旨〕 不善を減らし善に従う者は、剛陽より尊ぶものはなく、速やかなるより貴ぶものはない。損の初九に「事を己めて遄かに往く」とあり、六四には「遄かならしめば喜び有り」とある。損の六四が速やかに行動できる理由は、その初九の剛陽…

『日知録』易篇訳「有孚于小人」

有孚于小人 〔要旨〕 君子は、小人のすべてを見通せ、惑わされることなく従わせることができる。それゆえ小人を心服させるのである。解の六五爻辞「小人に孚有り」とは、そのことを言ったものである。 〔原文〕 君子之於小人也、有知人則哲之明、有去邪勿疑…

『日知録』易篇訳「罔孚裕无咎」

罔孚裕无咎 〔要旨〕 晋初六の爻辞の「孚罔なきも裕にすれば咎无し」とは、どんなに役職にあっても、その職責を全うすれば咎はないということである。もし職責を全うできなければ去る。 〔原文〕 君子信而後諫、未信則以爲謗已也。而況初之居下位、未命於朝…

『日知録』易篇訳「天在山中」

天在山中 〔要旨〕 大畜の象伝に「天が山中にある」というのは、地より上は「天」とされるからである。 〔原文〕 張湛注列子曰、自地以上皆天也。故曰天在山中。 〔日本語訳〕 張湛が『列子』に注釈して、「平地より上はみな天である」と言っている。それゆ…

『日知録』易篇訳「不耕穫不菑畬」

不耕穫不菑畬 〔要旨〕 无妄の六二爻辞に「不耕獲、不菑畬」とあるのは、耕作かつ開墾は、前人がすでに行ったことからである。その象伝に「不耕獲、未富也」とあるのは、前人が行ったことに依って自分が成し遂げたことは多くないからである。 〔原文〕 楊氏…

『日知録』易篇訳「不遠復」

不遠復 〔要旨〕 復の初九は、動くことの萌芽である。それ以前は、喜怒哀楽といった感情はいまだ現れていない。それゆえ「復において天地の心が見られる」とあるのである。顏回は中庸であろうとし、それを復卦に選び求めた。そうして八つ当たりをせず、過ち…

『日知録』易篇訳「童觀」

童觀 〔要旨〕 童児は、師の教えを受けなければ、何事も完全には習得できない。それでも、観の初六に「童観、小人咎无し」とあるのは、大人には大人の道、小人には小人の道があるからである。「君子吝」ともあるのは、君子が小人の道を行うのは恥ずべきこと…

『日知録』易篇訳「成有渝无咎」

成有渝无咎 〔要旨〕 豫上六の爻辞に「成れども渝ふる有れば、咎无し」とあるのは、人は過ちを犯しても初めから改めることができず、その過ちを反省しないことを知らしめるためである。 〔原文〕 昔穆王欲肆其心、周行天下、將皆必有車轍馬迹焉、祭公謀父作…

『日知録』易篇訳「自邑告命」

自邑告命 〔要旨〕 邑とは、人主が居る場所である。『易』で言う「邑」は、すべて内政のことに関係している。 〔原文〕 人主所居謂之邑。『詩』曰「商邑翼翼、四方之極」、『書』曰「惟尹躬先見於西邑夏」、曰「惟臣附於大邑周」、曰「作新大邑於東國洛」、…

『日知録』易篇訳「武人爲於大君」

武人爲於大君 〔要旨〕 「武人為於大君」は、「武人は大君と為る」ではなく、「武人は大君と為れ」と読むべきだとする。履六三の武人は、才能はなくとも志は高く、行動に移そうとするが、成就しないので、履六三には「虎の尾を履み、人を咥ひ、凶」とある。…

『日知録』易篇訳「既雨既處」

既雨既處 〔要旨〕 『易』での陽が唱導して陰が従うという陰陽の義は、夫婦関係では成り立たない。小畜の爻辞がそれを表している。その爻辞では、とりわけ婦が夫を制し和ならざる状態の場合は言及するが、夫婦が正しく和している状態の場合は言及していない…